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第五十九回「ターニング・ポイント」~新冷戦を観る

 人生を振り返ると、あぁ、あの時が転換点だったなぁ、と思う時がある。
 ほんの少し結果が違うだけで、全然違う人生になっていただろうなぁ、というような妄想が頭をよぎり、時にうれしく、時に背筋が凍る。が、面白いのは実際その時それを行っている時にはこのように感じないことだ。ただ、考え、行動しているのみ。しかし、その時の行動が次の思考を規定し、また新たな行動を造っていく。まるでドミノが次々に倒れていくようにこの連鎖が続いていく。この加速していくドミノの流れを断つのは容易ではない。
 歴史的には…今、そのような時を迎えているのかもしれない。

 



 去る8月7日、グルジアが南オセチアに侵攻した。
 北京五輪の開幕式でプーチン首相がいない間を狙ったという報道もある。
 これに対し、ロシア軍は…北京五輪もなんのその、なりふり構わず対抗措置をとった。つまりは武力をもって、南オセチアからグルジア軍を追い出した。
 そしてこのロシアの軍事行動の大義名分は明快だ。
 「民族自決権を領土保全の原則より優先させたコソヴォの例にならっただけだ。欧米はコソヴォ独立を支持したではないか」
 ちなみにチェチェン分離独立問題に際しての矛盾を問われると、「南オセチアの問題とは大きな違いがある。チェチェンは国民投票において国民の大部分がロシア連邦に残ることを望んだことだ」と一蹴している。

 さて、興味深いのは、今回の南オセチアを巡る対立の効果がドミノ式に広がっていったことだ。
 まず一つ目のドミノは米とポーランドがミサイル防衛システム(以下MD)配備において合意に至った事。

MD計画>「ルビコン川渡った」ポーランド 交渉決着
8月15日20時19分配信 毎日新聞

「ルビコン川を渡った」--。ポーランドのトゥスク首相は14日、米国とのMD計画の交渉決着をこう表現した。難航していた交渉はロシア・グルジア間の軍事衝突に背を押される形で一転、基本合意に至った。首相は12日、「グルジア情勢はポーランドと米国の関係強化が不可欠であることを示した」と言明。米国の譲歩の背景にグルジアへのロシアの軍事介入があることを指摘した。ロシアは14日、9月に予定されていたラブロフ外相のポーランド訪問を取りやめたと公表、早くも不快感を表明した。グルジア情勢を巡ってはポーランドのカチンスキ大統領が近隣4カ国首脳とグルジアを訪れ、ロシアの軍事介入を厳しく非難。そうした中でのMD合意だけに、ロシアからの激しい反発が予想される。最終更新:8月15日20時19分

紛争勃発、駆け足合意 MD配備 米、ポーランドに譲歩
8月17日8時0分配信 産経新聞

 難航していた米国のミサイル防衛(MD)の施設配備をめぐる同国とポーランドとの交渉が14日に急転、合意に至った背景に、グルジア紛争でロシア発の脅威が一気に増大したことがあるとの見方が、米メディアで相次ぎ報じられている。15日付の米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は今回の合意に関し、「旧ソ連の従属国だったポーランドのような国で高まる警戒を反映している」と伝えた。米国は、MDの東欧配備構想の一環として、ポーランドへの迎撃ミサイル基地の建設を目指している。だが、ロシアの標的となるのを恐れたポーランドが防空力強化支援を求めるなどして、交渉が長引いていた。7月にポーランドが米提案を拒否して停滞していた話し合いはしかし、グルジア紛争後に再開されるや、米国が地対空誘導弾パトリオットをポーランドに配備し、同国有事に際しても軍事協力することで、2日間にしてまとまったという。同紙によると、パトリオット操作要員として、米兵がポーランドに駐留する異例の態勢が取られ、同国有事には、米軍が北大西洋条約機構(NATO)よりも迅速に対応する。今回の紛争で米欧が後手に回った点を踏まえた措置といえる。米交渉責任者はAP通信に対し、合意は同紛争とは無関係だと説明した。しかし、同日付の米紙ウォールストリート・ジャーナル(電子版)の社説は「グルジアがなお傷ついている今、(ポーランドが)この方針を表明したことは偶然の一致ではない」としている。最終更新:8月17日8時0分

 ここではポーランドのトゥスク首相の言葉が印象的だ。「ルビコン川」を渡った。そう、時代はすでにルビコン川を渡ったのだ。
 さて、このMDは2002年、9.11同時多発テロ以後、テロとの戦いに邁進する上で、ABM条約を破棄すると同時に打ち出された米戦略の要である。このミソは…基地が必要だという事だ。もちろん米国、もしくはNATOの影響下にあるものを示している。
 そしてこの他国領土内への城の建築は、NATOの東進の要を成す。興味深いのは…実際に昨年のNATOサミットに機に作成された「黒海地域における新北大西洋戦略(“The New North Atlantic Strategy for the Black Sea Region”)」においてすでに、黒海と南カフカスを「新たな欧州と大西洋の境界地域」と規定し、「この凍結された紛争地域が拡大している西側(NATO)の新たな国境上で機能的な集合体へと発展していく」と言及していることだ。またこのレポートはアゼルバイジャンとグルジアがカスピ海から欧州へと通ずるユニークなパイプラインの回廊を提供するとしている。
 この方針にまさにカフカス地方に位置するグルジアやウクライナといった国は賛同し、NATO加盟を急いでいる。反面、ロシアは当然のことながら、軍事的脅威として反発を強めている。
 この対立の一つの臨界点として、今回の米国に支えられているグルジアと、ロシアに支えられている南オセチア自治州の攻防がある。



 二つ目のドミノは石油価格の下落だ。もちろん石油によって輝きを取り戻しているロシアを制すために、サブプライム問題によって高騰した石油価格が下落しているとは言わない。が、一因を形成していると考える。
 そして、米勢力による石油価格の操作は十分可能である。なぜなら、近年の石油高騰は周知のとおり、投機資金の流入がその主原因であるからだ。つまり、バラ革命のスポンサーであるジョージ・ソロス氏などが率いるヘッジ・ファンドがその気になれば、その投機資金を引けばいいだけのことだ。偶然ではあろうが、8月11日にはグリーンスパン前FRB議長がオイルの需要が急激に高まることはなく、近い未来にオイルに大量の投機が成されることはないだろうと発言している。
 具体的には順調に上昇していた石油価格は7月11日を境に下落に転じている。7月11日に1バレルあたり147.27ドルを記録したのが、8月28日には118.15ドルまで下落している。

 

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 とどのつまり、7月11日前後が一つの転換点を成している。

 この前後に何があったか?…今日の課題がすべて顔を出しているといわざるをえない。

7/6 メドヴェジェフ、南オセチアへのグルジアの武力行使を牽制
7/7 洞爺湖サミットにて米ロ首脳会談(MD問題)
7/8 米・チェコMD協定調印
7/9 イラン、ミサイル実験、米印核協力動く
7/11 ロシア、リビアとの協力表明(地中海ガスパイプライン)、TNK-BP問題
7/12 プーチン演説、六カ国協議閉幕

 6日にメドヴェジェフ・ロシア大統領がすでにグルジアの南オセチアへの武力行使を牽制している事から始まり、二日後には、ポーランドと並ぶ中欧MDの拠点であるチェコと米国がMD協定を調印している。余談であるが、この三日前の7月5日にポーランドでは、前出のトゥスク首相が米提案を蹴っている。これは今回の米・ポーランドMD協定の調印がいかに急転直下のものかを如実にあらわしている。この合間には7日に洞爺湖サミットの中で行われた米ロ首脳会談では、MD問題が討議されたが平行線で終わった。
 9日にはこの悪の枢軸であり、この米国のMDの主敵、イランがタイミングよくミサイル実験(シャハブ3→ノドン型→もとはロシア型と目されている)を行い、また米印核協力を前に進めるために国際原子力機関(IAEA)は9日、米印民生用原子力協定の発効に必要となるIAEAとインドの保障措置(査察)協定の原案を理事会各国に配布した。ちなみに8月1日には国際原子力機関(IAEA)の理事会が、米国とインドの民生用原子力協定発効の前提条件となるIAEAとインドの間の保障措置(査察)協定について協議し、全会一致で承認した(※NSGでは蹴られた)。11日に興味深いのは、ガスプロムのミラー会長がリビアのカダフィ元首と地中海ガスパイプライン協力について協議したことだ。もしこれが実現すれば、またロシアに欧州はエネルギー問題で首根っこを握られることとなるし、かつ米英のリビア利権のうまみは明らかに減る。また同日英国のBP職員がロシアから国外退去の予定との報道があった。これはとBPとロシアのガスプロム側との折衝がうまくいっていないばかりではなく、リトビネンコ事件後、悪化し続けるロ英関係の証明でもある。極めつけは12日の出来事だ。ロシアのプーチン首相はアルハンゲルスク州セベロドゥビンスク市においての演説で「ロシア・原油、ガス産業は重大な岐路に立っている」と明言した。そしてこの日に偶然ではあるのだろうが、六カ国協議が閉幕している(この関連性については後に述べたい)。

 このように米ロのせめぎあいを一つの機として、原油価格は下落し始めた。
 再確認しておきたのだが…石油そしてLNGは今だその絶大な価値を保っている。いや、その価値はむしろ上がっているといえる。

 工業を基盤とするこの資本主義のサイクルを回す仕組みには石油が必要なようになっている。代替エネルギーの検討・開発は成されているが、まだまだ石油が占めるエネルギー需要のシェアは絶対である。かつピークオイル、サブプライムローン問題を踏まえると、石油の価値は相対的に上がっている。
 ゆえに米国の権力者は最終的にイラク侵攻を決めた。石油はこの最も大きな要因の一つを占めている。ちなみにイラク侵略石油論についてはブッシュ大統領やライス国務長官らは頑なに否定してきたが、グリーンスパン前FRB議長が以下のように明言した。
 「公表されたサダム・フセインの大量破壊兵器への懸念があったにせよ、米英の権力者はまた世界経済を廻すために不可欠な資源を持つこの地域の損害に関心があった。私は誰でも知っている事実、つまりイラク戦争は主として石油のためのものだった事を認める事が政治的に不適切とされていることを悲しく思う。
“Whatever their publicized angst over Saddam Hussein’s ‘weapons of mass destruction,’ American and British authorities were also concerned about violence in the area that harbors a resource indispensable for the functioning of the world economy. I am saddened that it is politically inconvenient to acknowledge what everyone knows: the Iraq war is largely about oil.” 」
 
 また石油をはじめとするエネルギーに関して…

 キッシンジャー博士とブレア元首相は去る6月にロシアにて、すでに興味深い事を指摘している。
 
 「エネルギー確保競争が国際舞台における政治的ライバル関係を一層激化するかもしれない」
 「エネルギ供給処を確保するために各国が競っているゆえに、エネルギー安全保障を原因とした侵略戦争が起こりうるし、供給を制限した状況において需要が継続的に増加するならば我々は19世紀植民地時代と同じような衝突をするだろう」
 
 これはまさに今回の南オセチアを巡る事態を予見させる。
 さらに彼らは面白いことを言っている。

 「環境問題、資源問題、そしてテロリズムは米ロ間の対立によって対応しうる(environmental or oil or terrorist issues “can be dealt with by confrontation between the United States and Russia)」
 「ロシアの凋落は米国の国益ではないし、米国を主役として見るのはロシアの国益ではない(It is not in the US interest to keep Russia down, and it’s not in the Russian interest to look at the United States as a protagonist)」
 「覇権が東方に、つまりロシア、中国、インド、そして中東に移ってきている(power in the world was shifting eastward to Russia, China, India and the Middle East)」
 「このような移行は最終的に軍事力によってエネルギー供給を確保した植民地獲得競争への回帰をもたらすだろう。(these shifts might eventually result in a return to old colonial power plays in which military force was used to obtain energy supplies)」

 この最後の部分においてエネルギー安全保障は軍事力によって確保されるという。石油がなければ、侵攻・占領に必要な通常兵器は用を成さない。またこれは経済が鈍化した時には軍事に振り子が振れることにも合致している。特に今はサブプライムローンで世界経済の鈍化している時だ。
 さらに石油を必要とする通常兵器の例外が…核である事を考えれば、これは非核化の流れにも明らかに影響を及ぼす。
 
 私的には、このブレア氏の発言はエネルギーさえしっかりと抑えれば…BRICs、特には中国とインドを絶妙な距離にてコントロールできるという自信の表れのようにもとれる。これは太平洋戦争においての日本を見れば、如実であろう。もちろん、この事を中印は重々承知している。特に東アジアにはエネルギーは少ないのだ。ゆえにせめぎあいが必然的に起こり、激化していく。
 ちなみに中国に関していえば、コソヴォ、南オセチアの民族自決権優先による独立が可能となるならば、自らの体内に大変な爆弾を抱えている事となる。

 最後に…このような話をもろもろ踏まえ、彼らはメドヴェージェフロシア大統領とも会談したと私は推測する。
 これが前述の「環境問題、資源問題、そしてテロリズムは米ロ間の対立によって対応しうる(environmental or oil or terrorist issues “can be dealt with by confrontation between the United States and Russia)」というような表現になるのであろう。
 …6.6からすべての流れが変わった。



 三つ目のドミノは米大統領選に波及した。
 ロシアの脅威をメディアコントロールにより、印象付けた事でマケイン共和党候補の支持率が、オバマ民主党候補のそれを初めて上回ったのだ。

 米大統領選>マケイン氏リード 激戦の様相に…支持率調査 8月21日10時7分配信 毎日新聞
 ロイター通信と米ゾグビー社が20日発表した米大統領選の支持率調査によると、共和党のマケイン上院議員が46%で、民主党のオバマ上院議員(41%)を5ポイント差で上回った。前回7月調査ではオバマ氏が7ポイントのリードだった。オバマ氏がリードしている他の調査でも両氏の差は大幅に縮まり、激戦の様相を一段と深めている。  調査の分析では、マケイン氏がロシアとグルジアの軍事衝突で存在感を示したことなどが後押ししたとされる。経済対策でもオバマ氏に9ポイント差を付けた。オバマ氏は民主党支持層で9ポイント減らしたほか、支持基盤の35歳未満の若年・青年層で12ポイント、大卒などで11ポイント減少。幅広い層で下落した。  他の最新調査では、ロサンゼルス・タイムズでオバマ氏が45%でマケイン氏(43%)に2ポイント差でリードしたが、6月の12ポイント差から大幅に縮小。クイニピアック大調査ではオバマ氏のリードは7月の9ポイントから5ポイントに縮まった。  また、選挙情勢分析機関リアル・クリア・ポリティクスは、現時点で投票した場合、マケイン氏が激戦州オハイオやバージニア、インディアナで競り勝ち、選挙人の過半数に達して勝利するとの試算を発表した。

 マケイン氏は元々グルジア・ロビーであった。8月25日には、マケイン氏の妻がトリビシに飛んでいる。
 これで、米大統領選の行方はわからなくなった。

 そしてこの動きがそのまま四つ目のドミノを倒す。それは…

 北朝鮮の寧辺核施設の無能力化の中断だ。北朝鮮外務省は26日朝鮮中央通信を通じて、この旨を発表した。この中で、北朝鮮外務省は14日にこれを該当機関に通達したと明かしている。同日、ソン・キム米国朝鮮問題担当特使が訪中しているが、報道によると朝米間の接触はなかったとされている。

 …米大統領選の行方が不透明になったことで、北は様子見に入ったのだ。
 この見極めには慎重に慎重を期すであろう。

 二つ目のドミノで述べたように、「この最後の部分においてエネルギー安全保障は軍事力によって確保されるという。石油がなければ、侵攻・占領に必要な通常兵器は用を成さない。そして、この例外が…核である事を考えれば、非核化の流れにも明らかに影響を及ぼす」という事態になるのならば、非核化を目指す六カ国協議は進まない。ましてや北東アジア版OSCEなど夢のまた夢だ。

 この脈絡で気にかかるのが、8月18日 ムシャラフ・パキスタン大統領が辞任したことだ。パキスタンのスポンサーは米国のエネルギー安全保障における一つの重要な役割を担う産油国、サウジアラビアだ。仮にロシア支援下で、イランが核武装に成功したとすれば、サウジアラビアの核武装は時間の問題である。イスラエルの核武装を黙認している米国はこれにストップをかけにくいのではないだろうか。最悪の場合、米との核協力を推進しているインド、パキスタン、イスラエル、サウジアラビア、そしてイランとエネルギー資源競争時代の自衛のための核武装国がエネルギーの宝庫、中東に乱立することとなる。
 が、この最悪と思われる状況にもいい点はあるものだ。…イランが常々言っている様に、原子力の平和利用はどの国にも与えられなければならない権利だ。そして、原子力の平和利用の延長線上に核兵器開発がある。表裏一体といっても過言ではないだろう。であれば、この最悪と思われている事態は核抑止力のがうまく機能している状況下においては、最もクリーンなエネルギーとして知られ、石油の代替エネルギーとして有力視されている原子力の拡散・推進であるともとれる。

 まぁ、とはいっても、イスラム革命の震源、イランの豊富な石油を背景としたエネルギー外交、核武装あるいは原子力の平和利用に関しては欧米の権力者は頑なに拒んでいる。
 キッシンジャー氏も、こう記している。
 「イランは尊重されなければならない合法的な向上心(原子力の平和利用を含む)を持っている。しかしながら、それは米国と他の工業国が必要とする石油のコントロールを含むものであってはならない。世界秩序の転覆と地域覇権を追求しているイラン-現在これが主流のように見える-は渡る事を許されないラインに直面する。工業国は彼らの経済が依存している地域を支配しようとする過激な力を決して容認しない。そしてイランによる核保有も国際的な安全保障とは相容れない。(Henry Kissinger echoes this view in his op-ed. “Iran has legitimate aspirations that need to be respected,” he writes — but those legitimate aspirations do not include control over the oil that the United States and other industrial countries need. “An Iran that practices subversion and seeks regional hegemony — which appears to be the current trend — must be faced with lines it will not be permitted to cross. The industrial nations cannot accept radical forces dominating a region on which their economies depend, and the acquisition of nuclear weapons by Iran is incompatible with international security.” Note that Kissinger prioritizes Iranian (or “radical”) control over regional oil supplies over concern about the country acquiring nuclear weapons)」

 ちなみに日本の核武装も、難しい。IAEAのほとんどが日本の原子力平和利用の監視のためにあてられている。
 加えて、資源が乏しく、かつ極東に位置する日本がエネルギー資源競争時代を生き残るのは難しいように思える。
 特に単独では不可能に近いだろう。



 …東アジアの地位が向上しているにせよ、東アジアは欧米からは遠いのだ。
 「Geography is fate(地理は運命)」である。そしてこの地政学的な条件が欧米の権力者達の戦略に類似性を持たせる。もちろん巧妙なカモフラージュが施されるのだが。

 …グルジア・南オセチア紛争後、メディアに「新冷戦」という文字が躍っている。米国のGDPがロシアのそれの15倍である事、イデオロギーの対立が存在しないことからこのネーミングは、ふさわしくないという意見がある。が、米国の経済力が相対的に弱まり、ロシアがエネルギー外交によって潤い始めたこと、イデオロギーに変わる対立軸の存在~例えばNATOとSCO~を勘案すると、冷戦時と最も違うのは…「BRICs」という変数の存在とエコである。
 最後に冷戦に関する以下の記事を紹介して、終わりたい。
 

スターリンが朝鮮戦争に米国誘導、当時の文書発見
6月25日14時13分配信 YONHAP NEWS
【ソウル25日聯合】旧ソ連指導者スターリンが1950年の朝鮮戦争に米国を引き入れることを望み、戦争発生直後に招集された国連安全保障理事会に当時のソ連が欠席したのも、米国の参戦を誘導するための緻密(ちみつ)な計算だったことを示す文書が公開された。スターリンはまた、中国も参戦させることで米中が朝鮮半島に足止めされる状況を作るという戦略を立てていたことも分かった。1950年8月27日にスターリンが当時のチェコスロバキアのゴットワルト大統領に送った極秘電文から明らかになったもので、中央日報が25日に報じた。
 その年の7月初めに開かれた国連安保理で、旧ソ連軍が国連軍の派兵に拒否権を行使しなかったことに問題を提起したゴットワルト大統領に対し、スターリンは電文で「米国が安保理での多数決による決議を容易に得られるようにするため」と説明した。また、「これにより米国は韓国での軍事介入に巻き込まれることになり、軍事的威信と道徳的権威を喪失しつつある」と主張した。
 スターリンは特に、「米国が朝鮮戦争への介入を続け、中国もまた朝鮮半島に引き込まれればどのような結果が出るかを考えてみよう。欧州で社会主義を強化する時間ができ、国際勢力均衡の面でわれわれに利得をもたらすだろう」と強調した。
 スターリンの電文は、中国・北京大学歴史学部のキム・ドンギル教授が2005年にロシアの3大国立文書保管所の一つである国立社会政治史文書館(RGASPI)で入手した旧ソ連の資料に含まれていた。朝鮮戦争に関連し、スターリンが直接開戦前後の国際情勢と自身の戦争構想を具体的に言及した文書が公開されたのは今回が初めてとなる。特にこの文書には、スターリンが米国の介入を懸念し北朝鮮の金日成(キム・イルソン)主席の南侵計画に反対したとの通説を覆す内容が盛り込まれている。
 電文の末尾でスターリンは、撤収した国連安保理に旧ソ連が復帰しようとするのは米政府の好戦的政策を暴露し、米国が安保理を利用するのを防ぐのに効率的なためだと付け加えた。
 この電文を分析し「ゴットワルトに送ったスターリンの電文と韓国戦争の起源」と題した研究論文を書いたキム教授は、電文について「スターリンが戦争を承認することになった背景を含め朝鮮戦争の起源を新たな角度から説明している文書」だと話している。
最終更新:6月25日14時13分
 

 元曉大師の金剛三昧経論に曰く、

 夫一心之源離有無而濁浄 三空之海融眞俗而湛然
 湛然融二而不一 濁浄離邊而非中 非中而離邊
 故不有之法不即住無 不無之相不即住有
 不一而融二 故非眞之事未始為俗 非俗之理未始為眞也俗
 融二而不一 故眞俗之性無所不立 染浄之相莫不備焉

 「湛然不一而融二」し…

 21世紀が再び戦火に包まれないために祈り、考え、行動していこう。合掌

追伸:以下、容疑者Xの献身からの抜粋

 「ははぁ、そうですか。先生のお作りになる問題なら難しそうだ」
 「どうしてですか」石神は刑事の顔を見据えて訊いた。
 「いや、ただ、何となくそんな気がしたんです」
 「難しくはありません。ただ、思い込みによる盲点をついているだけです」
 「盲点、ですか」
 「たとえば幾何の問題に見せかけて、じつは関数の問題であるとか」

 
 
 人間はしごく囚われるようにプログラミングされている生き物だ。
 がゆえに、表面上の目に見えるものに、思考を奪われる。
 人を欺かんとするならば、ここを衝くことだ。
 今、表面上にある政局も例外ではなく、表面は表面でしかなく裏そのものではない。
 その真意は別にある、と確信している。

 対外的には米大統領選をはじめとして、しばらく喧騒が止まない事が予想されるこの時期が大切なのだろう。
 天が一筋の道を配されることを祈願す。

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