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第六十回「ハングリーⅡ」~今こそ、ハングリーを発揮する時

 今、サブプライム・ローン問題から波及した景気後退が世界を呑み込まんとしている。

 日本では株価が一時7000円台を切った。

更新: 2008/10/28(11:45)
 記録的な株安どこまで…一時6000円台をつけため息も
 27日についに26年ぶりの水準まで落ち込んだ株価は、28日も値下がりして一時、6000円台となりました。
 心理的な節目とされる7000円の大台を割り込むと、投資家からは次々にため息や不安の声が上がりました。ニューヨーク市場が 200ドル以上も下落したことで、景気や企業の業績への懸念がいっそう強くなりました。円相場も、92円台から93円台と企業の想定を超える円高水準が続いています。株安に歯止めが利かない状況に、中川財務・金融担当大臣が空売り規制の強化を前倒して28日中に導入すると発表しましたが、大きな材料とはなりませんでした。午後にはホンダ、パナソニックなど世界的な企業の決算発表が控えていて、場合によっては荒れた展開も予想されています。(ANN NEWS)

 
 ニュースを見ても1929年、1987年の大恐慌を上回る事になろうという悲観的な予想を元に構成されているものが多い。
 これらによる感化、そして実際の感覚からこの頃は周辺でも「景気が悪い」という言葉しか聞こえてこない。

 米国景気の後退が世界金融システムだけではなく、実体経済に影響を与え、それをマスメディアがこぞって報道する事で、下々の私たちの精神的ダメージは増大しているのだ。

 が、私は思う。死は生と表裏一体…
 ピンチはチャンスなのだ。
 

 
 …最近、久しぶりに韓国ドラマの史劇にはまっている。その名も…「大祚榮」(テ・ジョヨン)。
 テ・ジョヨンは高句麗滅亡後、渤海(698-926)を建国する。私はこの史実や武勇伝もさることながら、彼と登場人物のハングリーに惹かれ、共感する。もちろんドラマ上の脚色がかなりあるという事を前提としても、彼らのハングリーは非常に魅力的だ。。

 まず、大祚榮は奴隷出身だ。ある理由があって淵蓋蘇文の奴隷として仕え、様々な苦難を経ながら成長し、最後には奴隷から脱するだけでなく、高句麗を勝利に導く。そして高句麗滅亡後にもあきらめず活動し、最後には渤海建国の夢を成し遂げる。
 次に、彼の仲間は高句麗人だけではない。靺鞨や契丹など様々な種族(もとは同根)からなるのだが、彼らもまた高句麗の中では、決して優遇されていたわけではない。差別があった。が、ハングリーと実力で駆け上がり、利だけでなく和の精神で渤海を建国した。
 またこのドラマの最重要キャラクターの一人、契丹の薛仁貴は単に唐の一兵卒だったにも関わらず、ハンディ・キャップをものともせず、唐の大将軍にまで成り上がった。何をもって?
 知恵とあくと押しの強さ、しぶとさ、そして…ハングリーをもって。
 そしてこのまったく同じ理由をもって、何度敗れても高句麗に挑み、最後には滅亡へと追いやっていく。

 彼らのようにもちろん、ピンチをチャンスにするのは容易ではない。
 ハングリーをもって、困難を耐え忍ぶ事が要る。そしてこれは口で言うほど、簡単な事ではない。
 が、その先には必ず何らかの変化がある。
 これは歴史が証明していることだ。

 
 
 さて、翻って、現在。
 今、私たちが目の当たりにしている世界経済の激震を端的に表現すれば…

 「ドル体制」が揺らいでいると言えよう。
 ニクソンショック、1980年からの「新自由主義」の台頭~レーガノミクスを経てきた米国の力の源泉、ドル体制が今、崩壊しようとしている。
 

 金本位制からの離脱「ニクソンショック」によって、米国は経済収支赤字の一部を金によって埋め合わせする事を放棄した。結果、米国の経常収支赤字は各国のドル準備としてそのまま残ることとなった。つまり、基軸通貨ドルを擁する米国が借金を払うために輪転機を廻して刷ったドルがそのまま残ることとなったわけである。

 そしてこの米国の経常収支赤字は1980年代から急激に増幅し始めていく。
 ここで問題は…

 いかにこの経常収支赤字をファイナンス(埋め合わせる)するか。
 これを米国は好景気演出によって、投資を引きつける事で成してきた。多額の外貨準備を保有している国々、特にはアジア諸国が米国へ投資し、米国経済を支えたのであった。もちろんここには経済的要因だけではなく、米国の政治的影響力が介在していることは言うまでもない。
 この投資が経済収支赤字を上回った余剰分を、米国は海外投資にあてた。
 1990年代からこの投資の主な窓口となっていたのが、今回のサブプライム騒動の主役、「ファンド」であった。

 これらファンドは、「労働の対価」といった概念からかけ離れた手法で、ただ利益を増幅させる事を追求していった。
 レバレッジ、時価総額などの金融トリックによって、実際の価値の何百倍、何千倍もの価値を創造していったのである。

 実際に問題の発端になっているこのサブプライムローンも元々は住宅ローンの一種に過ぎない。が、このファンドらが「証券化」というマジックを使ったがゆえ、事態は米国だけに留まらず、全世界に波及をしてしまった。

 サブプライムローン問題において、この「証券化」というのはほとんど詐欺に近いものだ。
 サブプライムローンの延滞率の上昇、つまり返済が滞りが著しくなってきた時、これを証券化し売り出したのである。
 たとえば、ローンの金額が100円としよう。これを証券として10分割し、10円の価格で売り出した。
 当然、値段が安くなった分、購入しやすくなる。加えて、これに格付け会社がAAAなどの高い格付けを与えたがゆえに、飛ぶように売れた。
 ファンドはこれだけではあきたらず、サブプライムローン証券と他の証券とを混ぜて、「再証券化」し、売りに出した。これで一層サブプライムローンの持つリスクを見えにくくしたわけだ。リスクが見えにくくなれば、また何も知らない人々がそれを買う。
 
 サブプライムローン問題→RMBS→CDO→SVI→モノライン(「CDS」)、このようなわけのわからない専門用語のオンパレードの金融トリックの連鎖の帰結として、本来米国内の問題であるはずのサブプライムローン問題が世界金融システムに多大なダメージを与え、それは実体経済~私たちの生活にさえ被害を及ぼしている。
 
 ここで不思議なのは、なぜ、サブプライムローン問題のようなすぐにわかるような方法で、米国は景気浮揚を狙ったのかという事だ。つまりはなぜ、「神様」とも崇められたグリーンスパン前FRB議長がこのような安易な方法で、米国の好景気を演出しなければならなかったのか。

 投資を呼び込むためというのも一因であろうが、それならもう少し違うやり方があったような気もするが…何にせよ、米国はソフトランディングの道を選んだという事だろう。(最終的な方向性は米国大統領選挙によって大体現れる。)
 加えて言えば、米国自らが、基軸通貨という特権を徐々に手放さざるをえない状況ができつつあるのだろう。

 しかし、このドル体制の死は…死そのものだけを意味しない。

 生と死は不可分、死は再生の始まりでもある。

 再生の始まり、それは、新たな枠組みの構築である。
 そして、この構築と確立には一定の時間が必要であろう。
 
 要は、この期間をいかにしのぐか。



 今から私たちにとってしんどい時期に入っていくことは疑いようもない。が、しかしたとえ生活水準が落ちたとしても、私たちはまだまだ幸せの中にいるという事を忘れてはいけないのではないだろうか。

 日本の方であれば、先の戦争に負けたときの焼け野原を思い出せばいい。
 
 私たち在日コリアンであれば、在日一世が日本の言葉も知らないまま、差別されながらも、生き抜いてきたそのハングリーを再認識すればいい。タコ部屋に入れられても、とても食えない大根汁を食いながらも、炭鉱でもなんでもやって生き抜いてきたではないか。

 歴史を鑑みれば…世界中の全ての人々が、現在より困難な時期を必ずしのいできているはずである。
 ご先祖様たちがどんなにしんどくてもあきらめず、しのいできたからこそ…

 今、私たちが存在しているのだ。これを忘れてはならない。


 しんどさからすれば、昔の方が間違いなくしんどい。

 今は、三度の飯を食べられる。
 服を着て、屋根の下で眠られるではないか。

 今こそ、DNAに刻まれたハングリーの真価を発揮する時だ。 合掌

 

追伸:
 危機にあたっては、分裂すれば、必ず破れる。
 個々の力は、思いのほか小さいものだ。
 …団結が、危機を乗り越える秘訣の一つだ。
 一世がそうしたように。
 あとは…

 時勢が許すかどうか。

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