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第五十二回「Normal country」 ~大連立の私的解釈

 今回は今取りざたされている大連立騒動についての私見を述べたい。



 福田首相と小沢民主党党首によるトップ会談にて大連立が話し合われた。
 そして結果として、今回は即座に大連立が実現されるに至らなかった。これに対しては色々な見方があると思う。
 「民主主義国家としてあるまじき事」、「憲法改正への布石にすぎない」という意見が内外で根強くある。全ての意見に一理はあるが、この問題は一面的に論じられるべきではないと考える。

 なるほど民主主義、そしてこの民主主義体制の最終形態とも言える二大政党制という観点から見れば、彼らの動きは批難されて当然なのかもしれない。しかし、日本に民主主義が導入されたのは約百年に過ぎず、戦後から数えればその歴史は60年に過ぎない。徳川家康以来265年の栄華を誇った徳川幕府のそれにまだまだ満たない。
 ここで私は現日本政府と江戸幕府とを引き合いに出したのは、何も単純にその年数を比較するためではない。
 民主主義という観点が絶対的なものではないという事をいいたいのである。日本はとかく挙国一致体制というと先の戦争においての大政翼賛会が引き合いに出されがちだが、挙国一致体制を敷く事が必要とされる時もあるのだ。
 特に国家の暗雲を振り払うためには。
 この一番の例が…

 当の「民主主義の伝道師」~9.11テロを受けて、見事に挙国一致し、アフガニスタンへと侵攻した米国ではなかったか。

 恒久的な挙国一致体制はありえないにせよ、国家の懸案を処理する上では挙国一致体制は最も効果を発揮する。

 そして今回の一連の動きはこれを念頭に置いたものだと私は観る。
 そう、日本の次の百年を決める非常に重大な問題が中心にある。それは…

 「国連安保理もしくは国連総会で批准された場合のみ、自衛隊の海外派遣を認めるという事を恒久化する」という事だ。

 私は一昨年2005年9月19日アップした「徳=得」の追伸でこのように記している。



(以下智光の独り言第26回「徳=得」からの引用です)

追伸:

 これは昨日(2005.9.11)の衆議院総選挙でも同じ事が言える。

 参議院で郵政民営化法案が否決された。

 これは小泉首相にとっては悪い事だった。

 が、この否決なくして、解散⇒総選挙というプロセスはなく…

 自民単独で全体の3/2、296議席を占めるという「大変いい事」もありえなかった。

 悪い事がいい事に変わる良い例である。

 しかし、これはもちろん、これからどうなるか~小泉さんにとって、国民にとっていい事になるかはまだわからないという事でもある。

 郵政民営化、これは非常に大きな賭けだ。

 国民の350兆円とも言われる金が民営化されるという事は、グローバリズム化された市場に乗せられるという事。(参照:『智光の独り言』第21回 点と線Ⅱ~ホリエモンとプリンスの共通点)
 これによって現れるいい事、悪い事のバランスが最終的にどうなるか?

 これはふたを開けてみなければ(何年か経たなければ)、わからない。

 ただ…

 これから気になるのはこの小泉自民の地すべり的大勝利をもたらした一番の功労者の動きである。

 この地すべり的大勝利をあげる事ができたのはなぜか?
 「小泉のカリスマと決死の覚悟」に次ぐこの勝利の原因は…

 小選挙区という選挙制度である。

 一つの地区からただ一人を選ぶこの選挙方法においては、昔の中選挙区制度のような「票を分け合う」という事が基本的にできない。つまり、一つの大きな風が吹けば、議席においての「バランス」というものが崩れやすいのだ。今回のように。

 そして、この小選挙区制度を導入したのは…

 民主党の小沢一郎である。

 …この小沢氏が岡田氏の後の党首選に立候補せず、前原氏が党首になった。
 もう小沢氏の役割は終わったのだろうか?

 この小沢氏の有名な標語に「normal country(普通の国)になる」というものがある。

 「普通の国」というのは日本が普通の国として欠けている機能を取り戻すということである。

 日本が欠けているもの、それは明らかに…

 軍事力である。

 これを取り戻すと小沢氏は公言している。

 そのためには憲法改正が必要であり、そしてこれを通すためには旧来のバランス重視の民主主義では到底なせない。

 このためには一瞬、極端に針を振る事が~独裁政権のような~必要であった。故に小沢氏はこれを見据え、この小選挙区というものをその豪腕で導入したのだ。
 …この舞台で今、うってつけの千両役者~小泉純一郎~が舞っている。そしてまたもっと大きな舞台~3分の2議席確保~もすでに整った。

 当然、この舞台の後は…

 一方に偏った針を戻さなければならない。

 これが、今、二大政党制を煽る意味だ。

 ここでもっと深く考えなければならない。

 日本が「普通の国」になる事を米が許す意図である。

 …小沢氏の先の標語は米人秘書によって創案されたという。

 軍事力を持った日本に課す役割と利益…これは何であろうか?

 私が思うにこの答えは、これに相反するかのように見える東アジア共存への動き~六カ国協議共同文書採択~が成った後を示唆している。…極端に一方に振れた針は戻さなければならない。


 どっちにせよ、行動は心によって造られ、その心の中には善と悪が混在している。

 小泉と小沢、この二人の腹の中、そしてそこから出る最終的な決断が、結果いい事になるのかはまだまだ見えない。
いや、見えなくて当然なのだ。

 なぜならば…

 それもまた天が下す采配=環境に左右されるからである。

 天が一筋の道を配される事を望む。

(以上、引用終わり。)


 現在の日本はNormal countryではない。
 軍事力においての自主性が確保されていない。
 福田さんと小沢さんはこの一点をもって、日本をNormal countryにせんという一点をもって過去の恩讐を越えようとしている。
 「政策の実現のため」というのはここに集約される。

 また「国連安保理もしくは国連総会の決議に則った場合にのみ」という制約を加えたのは、米軍再編などを筆頭とした新秩序構築の流れに流されてしまわなれないように加えられた、と私は観る。ここでは国連が実際的にはどのような組織であるか(非効率的プラス大国の影響力大)は彼らにとって問題ではない。では何がこの主眼か?
 …軍隊は出れるようになったが、そこでまた自主性を見失うという事態を予防するためである。

 ではなぜ今か?
 なぜ福田さんと小沢さんは今、大連立による政策実現を打ち出したのだろうか?
 それは…

 今がまさにターニングポイントだからだ。このまま座して死を待つ道を彼らは選択しなかった。

 つまりは、第二のロッキードによって、また日本が内部から崩壊させられるのをただ指をくわえて見ていられないのである。
 この機を逃し、そうこうしてるうちに世界新秩序が固まってしまえば、また百年ちかく機を待たねばならないだろう。
 
 さて、この結末はどうなるか。何にせよ…
 
 アジアの「和」の思想を中心とした世界平和の実現のために、天が一筋の道を配される事を望む。合掌



追伸:

 小沢さんは民主党の党首辞任を表明した。党首辞任これは一般的に悪い事だろう。
 が、悪い事と良い事が表裏一体であるという事は先の小泉首相の郵政解散が証明しているところでもある。

 ただ小沢氏にとっては、まず健康状態に気を使っていく必要がある。

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