第二十五回「明珠在掌」~二〇一四年 統国寺の標語
寒中見舞い申し上げます。
本年も年初めの法話は、統国寺の標語について書きたいと思います。
今年の干支は甲午年(きのえのうま)です。
例えるなら蒼い馬の年。また東方の馬とも読めますね。
木(甲)と火(午)があえば、燃え盛り大きな火となり、そして灰となる。歴史的に観て、この年が指し示す傾向は①戦争の機運が盛り上がっていくということ、②そして変化が定まるということです。
120年前には日清戦争が起き、そうして始まった変化が60年前に朝鮮戦争後冷戦体制が確立されたことで止まった。その後、冷戦は40年もの間続くこととなりました。
次にこの年の性質を表す納音(ナッチン)は沙中金です。
いわば水の中にある砂金。砂が舞い上がる水の中~目まぐるしい変化の中で、砂金~光が存在する状態。
上記の今年の干支と納音をともに勘案すると、「今年は変化が定まっていく中で砂金を探す」ことが非常に重要になってきます。
これらを考慮して、今年の標語は…
「明珠在掌」(ミョウジュザイショウ)にしました。
明珠は、きらきら光る珠を示します。つまりあなたの大切なもの、あるいは幸せといってもいいでしょう。
在は仏教ではただあるのではなくて、すでに存在するということ。
そして掌(たなごころ)はあなたの手のひらを指します。
「あなたのきらきら光る珠は、すでにあなたの手の中にある」
しかし、わたしたちの中にすでにある宝石を見つけるには、澄んだ心が必要です。
想像してみてください。
砂が舞い上がる水の中で、その水中にある宝石を見つけることはできるでしょうか?
砂のために視界が確保できず、見つけるのは難しいですよね。
宝石~ここでは金~を見つけるためには、まず舞い上がった水を鎮める必要がある。再度水中が澄んでこそ、水中の金の光が見えるようになるのです。
ではどうすれば水中で舞い上がる砂を鎮めることができるのでしょうか?
そのために欠かすことのできない心、それは…s
「感謝」です。
ありきたりな言葉かもしれませんが、この価値への気づきがなければ、あなたの心の中にある宝石は必然的に見失われます。
「自分の力で生きている」、この側面だけに囚われれば囚われるほど、心に満たされている水は乱れていく。
すべては自分の才能と努力の対価として得たもの、そうなればすべては当たり前に感じられます。ゆえに心が温まることはない。
感謝の心が欠けている人は、その人生がうまくいっている時はまだいい。しかし人生で必ずやってくる悪い時、その時が問題です。そこで必ず大きな壁にぶちあたる。
なぜ自分はこんなにがんばっているのに、結果がでないのか…、とばかり考え、やがて自分に自信がなくなり、信じられなくなり、そして生きる気力が失われていく。
あるいはこんなにがんばっているのに、なぜ自分の思い通りいかないのかと思い悩み、不平不満が尽きない。この世は諸行無常、人生の半分は思い通りにいかないものなのに、思い通りにいかない点ばかりに目が行ってしまう。
人生は思い通りにいかないものなのに、自分の力で生きているとだけ考えている人は、すべてを思い通りにしようとしてもがき苦しむ。その様はあたかも解けない問題の答えを追い求めているかの如く…。ストレスばかりがたまっていく。
このような過程にいては、心という水の中はしごく乱れやすい。
そしてその乱れ~砂が常に舞い上がっている状態では、そこにまぎれている宝石を探すことは不可能なのです。
…この世の法は、一長一短。
すべてにプラスとマイナスがある。
去年の標語の法話でも言いましたが、例えば地震でさえもこれに当てはまる。
もちろん大震災を引き起こし、多くの尊い命を奪っていく地震は悪に映るでしょう。
しかし実は地震は我々が生かされるために必要な事象でもある。
地震は地球にマグマがあるサイン。そしてそのマグマが地球の内部で廻っているからこそ、地球は温かく、水がある豊かな星でいられるのです。
地球が温かく、水が豊かであるからこそ、私たちは生きることができるのです。
善と悪は表裏一体。
良いことは悪いことにもなり、悪いことはまた良いことにもなる。
いわば良いことも悪いことも半分半分。
この法を観ることができるようになれば、あなたの心の水は常に澄んでいることでしょう。すべて~ふりかかる厄でさえ~がありがたく感じられ、心が温かい。
すなわちあなたが現在「悪」いと認識しているものにも、手を合わすことができるようになれば、あなたの中にあるきらきら光る宝石を見失うことはないのです。
この境地に至る第一歩は、自分が生きているだけでなく、自分は生かされているという事実に気づき、素直に手を合わせること。
これが明珠在掌の実践には必要不可欠です。
ぜひ今年一年、この標語を実践され、皆々様の心の中にある砂金~幸せが見失われないことを祈願いたしながら、終わりたいと思います。
統国寺 合掌
統国寺(古寺名:百済古念佛寺)
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