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第二十四回「自分にとって、人生で見失ってはならないものは何か、考えよう」~二〇一三年 統国寺の標語

 寒中見舞い申し上げます。

 今年初めの法話は、例年のごとく、統国寺の標語について書きたいと思います。

 

 さて、今年の干支は癸巳年(みずのとのへび)です。

 例えるなら、黒い蛇の年といえます。

 黒い蛇、こう聞いて何か連想しませんか?

 あの、高松塚古墳の…、四神図の…

 

 そう、玄武ですね。すなわち、北の守り神。

 よって、今年は北の方角にある神社・仏閣に手を合わせるのがいいかもしれません。

 

 次に年の性質を表す納音(ナッチン)は、昨年に引き続き長流水です。

 言わば、雄大に流れゆく大河の性質を持っている。

 すなわち、昨年に続き、時代がダイナミック、かつ着実に変化していくわけです。

 

 特に昨年と今年は干支、納音ともに水ですので、非常に大きな水をなしている。つまり、水の性質がより顕著に出ます。

 昨年の標語でも述べたように、水の性質とは①始まり、②争い、③智慧ですね。

 これらを合わせて考えると、世界が変化の中にあることを知り、それに対応するため、「大きな智慧」が必要となるということが示されています。

 旧来の考え方を改め、新たな価値観に基づいた新しい思考が必要とされているのです。

 そう、政治・経済・軍事、すべての分野で…

 

 価値観の変革が求められているといえます。

 このヒントの1つは…見えるものばかり追うことを止めること。

 見えるものの価値に囚われる思考を転換し、見えないものの価値に気づくことが大切なのは明白だと思います。

 

 これらを踏まえ、今年の標語の発表です。

 今年はこの重要な変化の時に各自が思考を深めようという意味を込めて…

 

 「自分にとって、人生で絶対に見失ってはいけないものは何か、考えよう」

 と、しました。

 少し「あれ?」と思われた方もおられるかもしれませんね。その方は鋭いですね。

 昨年までの標語は、あらかじめ答えを提示していました。

 しかし、今年は違います。

 このような大きな変化の中を生き抜くには、自分自身が見失ってはならないものをしっかりとつかまなければなりません。それほど、これからの変化は深く、激しいのです。

 

 今年、統国寺ではこの見失ってはならない「大きな智慧」として、2つ挙げたいと思います。1つ目の「大きな智慧」は…

 

 私たちは地球の中で生きているという事実です。

 地球で生きている、これはしごく当然のことでしょう。

 しかし、これが意味するところは何でしょうか?考えたことがおありでしょうか?それは…

 

 私たちは元々から「矛盾」の中で生きているということです。

 私たちは、災害でたくさんの人が死ぬことで苦しみ、時に絶望を味わいます。

 3.11の大地震はその典型でしょう。人々を絶望に突き落とすという観点からは、地震などの災害は悪そのものに映ります。

 

 しかし地球というものを知れば、それがあるがゆえに地球は豊かであることに気づかされます。

 地震の原因は、プレート間のひずみが弾けることにある。

 では、なぜプレートは動くのか?

 それはマグマがあるためです。地球の中核を取り巻くマグマがあるところでは外に出て、あるところでは中に入るからですね。

 そしてこのマグマに目を向けると、マグマは地球の中をぐるぐると回っている。

 これによって何が起こるかというと、まず磁力が発生します。この磁力が磁場を形成し、地球のまわりを包むことで、宇宙からの放射線の大部分が入ってこられないんですね。

 それでも微量の宇宙からの放射線で今でも年間10万人(有害宇宙線が原因でガンになり死亡した人の数)の尊い命が失われています。

 では、磁場がなくなったたらどうなるか?

 地球上の生物はほぼ絶滅すると考えていいでしょう。

 しかしここで重要なのは…

 

 実際に地球はこれを、一説によれば過去2000万年に60回の割合で繰り返してきているということです。
 磁場の逆転現象の過程で、磁場がなくなったことで、生命が死に絶えてきたのです。

 

 そしてまたマグマを語る上で大切なのは、マグマがあるがゆえに地球が温かいということ。

 6000~7000℃といわれるマグマが存在することによって、地球の温度は急激に冷えない。

 冷えないがゆえに何が存在しうるようになったかというと、それが…

 

 水です。

 そして水があるがゆえに、地球には生命が存在しうるわけです。

 

 例えば、火星に生命が存在できない理由は、水がないからです。

 そして水がない理由は、火星にはマグマがないことに起因します。

 マグマがあるということは…地球が生きているということなのです。

 

 どうでしょうか。マグマの存在と活動が災害となって多くの人の命を奪うと同時に、多くの命を生み、守っている…。

 ここで大切なのは、このように元々から私たち人間の人生は矛盾の上に存在しているということをしっかりと知るということです。

 

 そう、絶対的にいいこと、絶対的に悪いことはない。

 そして、いいことと悪いことは常に表裏一体である。

 

 私たち人間は矛盾にぶち当たった時、その矛盾を解消しようとして、悩み苦しみますが、矛盾は解消できないものなのです。地球の営み自体が矛盾に満ちたものなのですから、これはどうしようもありません。

 しかし、この事実を知ると知らないとでは雲泥の差があります。

 知らない人は、解けることのない矛盾に苦しみ続け、知っている人は矛盾とはそんなもの、とさっと流すことができます。
 これだけで、ストレスの量が全然違ってきますよ。

 

 さて、もう1つの見失ってはならない「大きな智慧」は、私たちは永遠の命を生きているという事実です。

 第1の大きな智慧では、矛盾の上に生きていることを知ることの大切さを説きましたが、その矛盾をいかに生き抜くか、がこの第2の智慧において示されています。

 私たちは、命を自分の命と錯覚しがちです。

 今、自分の意思に左右される自分の命…

 

 はたしてそうでしょうか?

 なるほど、目に見える命は生死~始まりと終わりがありますね。

 しかし、命は永遠でもあります。

 御先祖様たちがしんどい人生を生き抜いてきてくれたからこそ、私たちの命は存在する。

 そして、この今私たちが預かっている命は、未来に向かって永遠に続いていく。

 血もそうですが、血がつながらなくとも、社会的にも、そしてただのエネルギーとしても命はつながってゆく。

 そう考えれば、私たちの命は何らかのかたちで必ずつながってゆくのです。

 これを仏教では、輪廻といいますね。

 

 先ほど申し上げたように、私たちは矛盾に苦しみながら、生きる。人生を生きれば必ず耐えがたい苦しみが訪れる。
 この時、永遠の命の中で生きていることを知らない人は、弱い。自分の命なので、自分がしんどい時にどうしようと勝手ではないか、と考えてしまうからです。

 この一方で、永遠の命の中で生かされているとしっかりとわかっている人は強い。

 御先祖様たちも、しんどい人生を生き抜いてきた。戦争、飢餓、貧困、あらゆる矛盾に耐えてきた。だから、自分もがんばろう、と力が湧いてくる。

 また自分がこの命のたすきをつながねば、次の命がないと考えた時にも、踏ん張る力が湧いてくる。

 

 命は駅伝~永遠の命を生きているとしっかりと認識した時、おのずと感謝が生じ、心が温かくなる。
 この境地に至れば、あらゆる矛盾から生じる苦を打ち克ち、前に進んでいけると思います。

 統国寺の信者さんは、今年はこの2つの「大きな智慧」を忘れずに、しっかりと実践していきましょう。

 

 最後に、私たちは同じ地球号という船に乗っています。

 それにもかかわらず、争いが絶えないことを悲しく思います。

 今こそ、人類の争いの歴史が、和する歴史へと変化する転換期となることを祈願しながら、今年初めの法話を終わりたいと思います。

合掌 

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