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〈三災符の起源にまつわるお話〉

 

 ある韓国のえらい스님(和尚さん)が、韓国・朝鮮仏教において三災(厄払い)の起源についてこのような説話をしてくださいましたのでご紹介いたします。

 

 …ある村に母ひとりと子ひとりが田舎に住んでおったそうじゃ。

 母も子も毎日毎日、一生懸命まじめに働き、お互いをいたわりながら細々と暮らしておった。

 しかし冬が明け、春の兆しが見えてきた頃のある日の晩。

いつものように、家でくつろいでいると何か外で呼ぶ声がする。

 息子が出てみると、そこには一人のお坊さんが立っていた。

 

「もしよろしければ、一晩、泊めてくれんかのぉ。」

 

 ぼろぼろの衣をまとい、かつもう何日も体を洗っていないのだろう、少しにおう。

 だが親子はそれを快く引き受け、僧侶を家に招き入れた。貧しいながらできる限りのご飯をごちそうし、寝床を用意してあげた。

 翌朝、お坊さんがいった。

 

 「本当にありがとう。お礼に…そなたたちの運命を観てしんぜよう。」

 母と子がいえいえ結構です、と断る間もなく、僧侶はまず母の方を観始めた。

 とくに異常はなかったようで、すぐに息子の方に向き直る。そうしてまず目をみつめ、次に所どころに手をかざしていった。

 すると、僧侶が「可哀想に…」、とぼそりとつぶやき、肩を落とした。

 

 「何が可哀想なのですか?」

 そのつぶやきを聞き逃さなかった母親が、僧侶に向かって尋ねた。

 僧侶は黙ったまま、うつむいている。

 

 母親がお坊さんの手をとって、再度尋ねると「彼の寿命が尽きようとしておる。人の生き死には、どうにもならんものじゃ」と言い手を合わせて、立ち去ろうとした。

 

 慌てた母親は行きかける僧侶にすがる。「息子が死ぬということなのでございましょうか。」

 

 うなづく和尚。

 すると母親は「助けてください、助けてください、お坊さま」と半ば狂ったように哀願しはじめた。

 

 家の外に出ても、「どうか、どうかお願いします」と涙ながらに繰り返す母親。すると僧侶は歩みを止め、このように言葉を絞り出した。

 

 「彼が生きるためには3年後の大晦日が明けるまでに…

 

 この国の王女の寝室に行かねばならん。これは、そなたらにとっては広い砂漠の中に落ちた一本の針を探すようなものじゃて…」と絶句したまま、無念の表情を浮かべその場に立ち尽くした。

 

 母親はじっと僧侶の顔を見つめながら、掴んでいた手をゆっくりと放す。

 その眼にはもう涙はなかった。

 

 

 その日から、母親はどうにか「王女の寝室」に大切な息子を入れるべく、来る日も来る日もどうしたらいいか思案する日々。畑に出ていても、ご飯を作っていても、掃除をしていても、そればかりが頭の中を駆け巡る。

 そうして母親はその執念をもって、3年間あらゆる人づてを頼り、あの手この手を使い、どうにか和尚の言っていた最後の年の大晦日、やっとのことで宮中に入りこむことができた。

 しかし、王女の寝室までは守衛が立つ3つの門をくぐらなければならない。しかも息子をチマ(韓国・朝鮮民族衣装における女性のスカート)を隠したままで。

 この無謀とも思える計画も、母の子を思う気持ちを止めることはできなかった。

 母親は第1の門では守衛に袖の下を渡し、第2の門では守衛たちに笑顔で届けた夜食の中に眠り薬を入れ眠らし、第3の門では宮女の服に着替え、第2の門で兵士たちが襲われたと嘘をつき連れ出すことで、息子を見事通り抜けさせた。

 

 母の愛のおかげで、どうにか王女の寝室の前までたどりついた息子。だが守衛を連れ出しに行った母はもう横におらず、扉の前には一人佇んでいる。

 (もう亥時(※現在の21-23時)は回っているだろう。)

 年が明けるまで、それほど時間が残されていない。

 必死に王女の寝室の扉をたたきはじめた。

 

 「…」

 

 反応がない。

 

 (もう寝ているのだろうか、それとも部屋にいないのだろうか)、と思いつつも和尚の言葉を信じた母の想いを胸に、ただひたすらたたき続ける。

 

 もう何千回、戸をたたきつづけたであろうか。時にすればもうほとんど一時が過ぎ、年が明けようとした頃、上から異様な気配が感じられた。

 

 恐る恐る上に目を向けると、そこには息子の命を取りに来た虎たち(※韓国の和尚さんの言葉のまま。韓国朝鮮では死神を虎になぞらえる)が、そこまで迫ってきているではないか!

 

 (オモニ、もう、だめかもしれません…)と半ば観念しつつ、最後に渾身の力を込めて扉を一度たたくと、息子はそのまま気を失ってしまった。

 

 すると、扉が少し開き、あたりを見まわす眼光が1つ。

 王女がようやく音に気づき、出てきたのだ。

 

 自らの寝室の前に倒れている男を見て、思わず部屋を飛び出す王女。

 彼女も虎たちのただならぬ殺気に気づく。

 

 (このままでは、この男は死んでしまう。そういえば…)

 

 その瞬間、先日宮中に訪ねてきた大和尚の言葉が思い出された。

 「三災は外からの厄です。それは時に、虎となって人に襲い掛かり命をも奪っていきます。どうか王女様、万一そのような虎に襲われそうになっている者を見かければ、その者の匂いのついた下着をその虎に向かってお投げください。そうすれば、それが身代わりとなり、その者は難を逃れることができるでしょう。」

 

 王女は急いで、男の胸元から男が来ていた下着をはぎとり、迫る虎に向かって投げつけた。すると…

 

 虎たちは我先にと、その下着に喰らいつくと天に帰って行った。

 

 そうして、この息子と王女は結ばれ、息子は国の宰相となってともに国を良く治めながら、幸せに暮らしましたとさ。

 

 おあとがよろしいようで。合掌 

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