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第三十一回「今こそ一日一生の気持ちで生きてみよう~二〇二〇年 統国寺の標語」

 新年あけましておめでとうございます。

 今年も年初めの法話は、昨年の大みそかに住職が発表いたしました今年の標語について記したいと思います。

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 今年は庚子年(かのえねどし)です。

 陰陽五行説によると、庚は金物、鉱石などの大きな金を表し、色でいうと白となります。

 ゆえに今年は白いねずみの年といえます。

 白はまっしろ、まっさらというように何もない、新しい、つまり初めてという意。子という漢字自体も、分解するとはじめを表す一(イチ)とおわりを表す了(リョウ)でできていますね。また子は干支のはじまりとおわりが交わるところでもあります。

 要は、はじまりのはじまりということです。

 

 あと庚は大きな水を生む。そして子も水。ゆえに庚子は陽の金、陽の水が交わる大きな水でもありますね。そして、水は智慧の象徴。いわば大きな智慧が生まれうる年です。

 

 この庚子が交わった年の性質は何でしょう?それは納音で表されますが、今年の性質は壁上土です。端的に言えば、壁の土ですね。

 土は変化です。春夏秋冬の季節の変わり目に土用があることからもわかります。

 最近は土用といっても、ウナギを食べる夏の土用のみがクローズアップされがちですが(笑)、要は季節の変わり目に体調が悪くなりがちなことからウナギを食べて栄養をつけてそれに備えましょうということですね。

 この変化を表す土の中で、一番人間の目からよく見えるのが壁の土です。山の土よりも、林の土よりも、屋根の土よりも、近くよく見える。この象意は変化がはっきりと目に見えてくる、です。要は変化が完全に顕れる。

 

 今年顕れる変化はすでに私たちが見てきた変化の延長線上にあるものです。

 天気の変化がこの最たるもので、これまで私たちが経験してきたものとは全然違いますね。例えば、2018年には西日本、2019年には東日本で台風による甚大な被害が記録されました。西日本では台風で200人以上が死亡しましたが、それに加え強烈に印象に残っているのはタンカーがぶつかって、関空が閉鎖されたことですよね。関空が自然災害により一切使えなくなるとは事前に誰が考えたでしょうか?思いもよりませんでした。

 ちなみにこの時統国寺でも多くの木々が強風により倒れ、大きな被害が遭いました。この修繕が終わったのが、なんと…去年(2019年)の11月です。

 なぜだか、わかりますか?

 同じような被害を受けた人々の依頼が多くて、業者が忙しかったからです。…どれほど被害が大きかったかがわかりますね。

 去年東日本を直撃した台風19号では99人死亡、3人行方不明となりました。衝撃だったのは、死亡した方々のうちの2割以上の死因が、決壊した川に流されたためだったことです。

 この時、いくつ河川が決壊したか?

 答えは…80個です。これほどの数の河川が決壊すれば、水浸しにもなりますね。

 世界的に見ても、天気の変化は明らかです。オーストラリアでは、49度以上の猛暑が続き4か月も森林火災が続いている。アフリカでは東で2か月以上雨が降らず、南で100年に一度の干ばつ。インドでは10月の洪水でなんと1600人以上の死者が出て、タイでは氷河期のような現象が観察されている。

 

 以上の気象の世界的変化に加え、人の心―〈人気(ジンキ)〉―も荒れています。

 今年度々大きなニュースとなったあおり運転や、学校の先生も含めた大人のいじめなどはこの典型的な例です。また一日50人以上が自殺をしていますね。年に約2万人ですので全体的には少し減ってはいるのですが、問題は若い方々の自殺です。

 男性20-44歳の死因の第一位は…自殺。女性15-34歳の死因の第一位も…自殺。

 今、若い人が希望を感じられない世の中になってしまっている。

 

 天気も荒れ、人気(人の心)も荒れている。このような世をどう生き抜くか。

 これについて考え、統国寺では今年の標語を…

 

 「今こそ一日一生の気持ちで生きてみよう」にすることにしました。

 

 これは千日回峰行を2度成し遂げた天台宗大阿闍梨、酒井雄哉師のお言葉です。高倉健さんの師でもあります。

 千日回峰行は7年にわたって行われる荒行です。その行の中には9日間「飲まず、食わず、眠らず、臥せず」という到底不可能と思われる行も含まれます。

 その荒行の苦しい日々の中で、酒井氏は身体はずたずた、ぼろぼろとなりながら、ある時たった一日で履き潰した草履が目に留まります。

 「草履の一生は、そこでおしまい。明日になったら、また新しい草履を履いて歩いてゆく。そうか、僕も今日の自分は今日でおしまいなんだ、と思ったんだよ。明日になったら、新しい自分が生まれてきて、新しい一日を生きるんだって。

 …〈一日一生〉、今日のことは今日でおしまい。明日はまた新しい自分になって、新しい感覚で進んでいければいいんだ。」

 この酒井さんのような心境まで行かなくても、こんな心で生きてみましょう。このような〈心の工夫〉を一生懸命してみるのです。実は、それだけで人生の景色は大きく変わります。良い日も悪い日も、変化が激しくとも、それほどなくとも、こつこつこのように心の工夫をする努力を積み重ねていくと…

 

 人生最良の日を仏さまがプレゼントしてくれるかもしれません。

 そして、その人生最良の幸せな一日は、全体としては苦しみの方が多い一生に勝ります。

 

 「今こそ一日一生の気持ちで生きてみよう」、

 では、皆さんまた来年お会いしましょう。

 ※ちなみに今年庚子年の悪い方角は「西と南」となっております。合掌

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